バイオミメティクス

1. バイオミメティクスとは

バイオミメティクス

『Biomimetics』という単語は、Biology(生物学)、Mimesis(模倣)、Technics(技術)が組み合わさったもので、「生物の形態・生態・行動といった形質を、新たな技術開発などモノづくりの参考にする技術及び学問」を意味します。化粧品から宇宙工学等まで、とても様々な分野で注目されています。

生物学はモノづくりと関係ないと思われがちですが、長期間の進化によって人間の想像を超えるような仕組みや能力を持っています。 それらをモノづくりの参考にするのがバイオミメティクスです。

有名な活用例として、

  • ハスの葉表面の撥水構造を参考にしたヨーグルトの蓋
  • ガの眼を参考にしたモスアイフィルム
  • サメ鱗を参考にすることで流体抵抗を低減した水着
  • ゴボウの実がもつフック状の棘を参考にした面ファスナー

などがあります。

しかし、バイオミメティクスを学ぶ機会は現状とても少なく、企業にとっては導入のハードルが高い状況にあります。
そこでバイオミメティクスワーククリエイトでは、研究によってこれまで蓄積した情報や専門的な知識、企業での研究開発経験を活かし、そのようなハードルを乗り越えるサポートを致します。

余談ですが、「生物を参考にした技術開発」という意味の言葉は以下のように多くあり、厳密には定義が異なります。

  • バイオミミクリー
  • バイオミメティクス
  • 生物模倣
  • 生物規範工学
  • ネイチャーテクノロジー

2. バイオミメティクスのアプローチと効果

バイオミメティクスを用いた開発アプローチは大きく分けて2つ、「課題解決型」と「解決策提案型」があります。
それぞれメリットデメリットがあるので、研究開発の目的や状況によって選択します。

 ・課題解決型 Problem driven approach

課題解決型は、すでにある課題を解決するために生物を探す手法で、企業の開発で行うバイオミメティクスとしてこちらが一般的です。
主な効果は、「技術の性能向上」や「新メカニズムによる既存効果の発現」です。

例えば、“より速く泳ぐための水着の開発"はこれに該当します。すでに「水着」というものがあり、「さらに速く泳げるようにする」という課題に対するヒントをサメから学び、抵抗を下げる鱗の構造を参考にすることで「より速く泳ぐことのできる新しい水着」が開発されました。

つまり、より効率的な仕組みを生物から探すアプローチとなります。

■ step 1: 課題定義・分析
■ step 2: 生物学へ変換
■ step 3: 生物案探索・調査
■ step 4: 検証・実用化

 ・解決策提案型 Solution based approach

もうひとつの解決策提案型は、生物がもつ解決策を先に決めて(発見して)応用方法を考える手法です。
主な効果は、「新機能(新製品)の開発」です。
前者の課題解決型とは異なり生物の研究から始まることが多いので生物学者向け、もしくは時間に余裕のある技術開発向けのアプローチです。

応用したい生物の機能をアイデアとして研究するので時間や手間がかかるというデメリットはありますが、
オリジナリティの高い技術を生み出せる可能性があります。

例えば、面ファスナー(いわゆるマジックテープ※)はこれに該当します。 面ファスナーはゴボウの実の棘を参考に誕生した製品です。 ジョルジュ・デ・メストラル氏が、ゴボウの実が服に引っ付くことに気付き観察したところ、棘の先に小さなフックを持つことに気付きました。 その仕組みを、これまでになかった「着脱容易な構造」として開発したことが面ファスナーの始まりです。

サメの水着の開発と違うのは、開発された面ファスナーはその時点で存在していなかった点です。
目に見えない潜在的ニーズを発掘し対応できるアプローチになっています。

■ step 1: 生物機能の定義
■ step 2: 解決策の原理理解
■ step 3: 課題の発想又は探索
■ step 4: 検証・実用化

※『マジックテープ』は株式会社クラレの商標登録


3. なぜ生物を参考にするのか

生物は、地球上に誕生してから38億年ものとてつもなく長い時間で、進化を繰り返してきました。
その間、環境の変化や生存競争など、種として生き延びるために多くの障壁を乗り越える必要があったと予想されます。

遺伝子変異の進化によって、少ないエネルギーで効率よく生きる仕組みや、他の生物が生息しにくい環境でも生活できる特殊な能力などを得て、生物はそれらの障壁を超えてきたことでしょう。

そして、それらの特徴的な仕組みは、人間が容易に想像/創造できない可能性があり、人間が行うモノづくりの技術にヒントを与えてくれます。
それがバイオミメティクスとなり、私は「生物は先駆者」と捉えています。

生物は未記載種を含めて数百万から数千万種存在していると推測されています。
それほどいるのであれば、どこかに課題解決のヒントを持っている生物がいるような気がしませんか?

ぜひ、そのような生物を探して技術に応用するお手伝いをさせて下さい。


4. バイオミメティクスに関するおすすめ書籍

  • 国立科学博物館叢書⑯『生物の形や能力を利用する学問 バイオミメティクス』, 篠原現人・野村周平 編著, 2016, 東海大学出版部
  • 『物理の眼で見る生き物の世界ーバイオミメティクス皆伝ー』, 望月修, 2016, コロナ社
  • (絵本)『すごい!ミミックメーカー 生き物をヒントに世界を変えた発明家たち』, クリステン・ノードストロム 文/ポール・ボストン 絵/竹内 薫 監修/今井悟朗 訳, 2023, 西村書店

具体的な仕事内容に関しては、WORKページ参照
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